2009年の設計作品。
独立して4年目に手がけた住宅です。
私が設計する住宅には「パッシブ換気」を取り入れたものが多くあります。
しかし一般の方にとって「パッシブ換気」と聞いても、すぐにはイメージしにくいかもしれません。
パッシブ=受動的。
建物内外の温度差や重力差を利用し、自然に空気を動かす仕組みです。
それに対してアクティブ換気は、機械の力で強制的に空気を動かします。
特に北海道のような寒冷地では、冬に大きな内外温度差が生まれます。
室内で暖められた軽い空気は上昇し、建物の高い位置に設けた排気口から外へ抜けていきます。
同時に、建物の低い位置に設けた給気口から新鮮な外気が取り込まれる。
この自然な循環を利用するのが、パッシブ換気の基本的な考え方です。
しかし、換気計画は単なる設備計画ではありません。
重力差や温度差といった目に見えない現象を読み解きながら、
建築そのものの断面構成を組み立てていく行為です。
とはいえ、「パッシブ換気の家をつくりました」という説明だけでは面白くない。
当時考えていたのは、
空気の通り道と人の動線を重ね合わせることでした。
空気が上昇し、抜け、そして戻る流れを、
階段や吹き抜け、空間の連なりと一体化させる。
目に見えない空気の流れを、
建築のかたちや体験へと置き換えていくこと。
平面構成自体は非常に単純です。
しかしその背後には、自然の力をどのように建築に取り込み、
空間として成立させるかという思考があります。
独立当初から現在に至るまで、
ここ北海道にある豊かな自然現象――温度差、重力差、風、光――
それらを積極的に活かす設計を続けてきました。
このような視点で各作品をご覧いただければ、
また違った側面が見えてくるのではないでしょうか。