暮らしと建築のあいだで
北の大地に心惹かれ、私は夢を胸に北海道の大学へ進学しました。広大な空と大地、静かに降り積もる白い雪。その壮大な自然の中で、私の暮らしと建築への思いは静かに育まれていきました。気がつけば人生の半分以上をこの地で過ごし、日々の生活は北海道の風土と深く結びついています。それでも、若き日に見上げた本州の青空や、湿度を含んだ夏の空気、どこからともなく聞こえてくるセスナ機の音、低い鴨居のある家の薄暗がりと、窓の外のまぶしい光景色、そうした記憶が、今も私の設計の根底に流れています。
幼少期、私はものづくりに夢中でした。泥だらけになって遊び、実家の庭先で緑に触れながら、家という「器」の中で季節や光を感じて育ちました。いつか会社員になってボーナスをもらうことを夢見ていたものの、気がつけば親と同じく自然と向き合う自営業の道を選び、暮らしと仕事が溶け合う日々を送っています。季節の移ろいとともに変化する住まいの表情や、自然の声に耳を澄ませる時間が、私の設計に新たな彩りを与えてくれます。


社会に出てからは、暮らしの中に潜む小さな疑問や不便さを手がかりに、建築という終わりなき謎解きの旅が始まりました。分からないことに出会うたび、空間や素材、光と影の関係性に心を奪われ、日々の暮らしと建築が響き合う瞬間を探し続けています。悩みや迷いもまた、豊かな住まいを生み出す大切な糧となっています。
建築を通して学ぶことは尽きることがありません。クライアントの皆さまとの対話は、暮らしの中の小さな願いや発見を引き出し、設計に新たな息吹をもたらしてくれます。年齢を重ねても、暮らしへの好奇心や空間へのときめきは色あせることなく、むしろ鮮やかに広がっていくように感じます。
クライアントの方々と語り合うひとときには、日常の「当たり前」が揺らぎ、新たな視点が生まれます。暮らしの中にそっと隠れている小さな宝物それは、光の移ろい、風の通り道、家族の気配など、それらをひとつひとつ丁寧に拾い上げ、建築というかたちで表現していきたい。これからも、暮らしと建築のあいだで、皆さまと共に心に残る時間を紡いでいけたらと願っています。




