2012-09
所在地:札幌市手稲区
用途:住宅
構造:木造
規模:153㎡
Q値:1.24W/㎡K
換気方式:パッシブ換気
暖房方式:空気式ヒートポンプ(パッシブ換気暖房住宅)

北海道建築奨励賞
/日本建築学会北海道支部

新人賞/日本建築家協会北海道支部住宅部会


Photos taken by:Takashi Oosugi

敷地は札幌市の小高い丘に位置し、敷地の奥には自然豊かな森が迫る。
30年間、何も建つことなく野放しにされたひな壇状の敷地には、1本のイヌエンジュの木が大きな枝を伸ばし、敷地を覆っていた。
建物は、このイヌエンジュの木と裏の森、街との接点を拠所に計画を行った。
まず、裏の森に沿うように建物に角度を持たせると同時に、4分割した住宅の接続部にウッドデッキやガラスの透明な空間を挿入することで以前から存在していたイヌエンジュの木や森の存在感を街に対し失わない様に考えた。
必然的に基礎のボリュームが大きくなるなどのデメリットもあるが、これを蓄熱材等として積極邸に利用することで室内環境をむしろ安定させた。
高断熱の家にするにしたがって今では夏の日射をどうコントロールするかが北海道の建築物にも求められる、そこで南面採光を抑え、北側採光や地面からの反射光、雪の反射光などを積極的に利用し室内環境を安定させた。
結果として、夏の光、冬の光が全く異なって室内に降り注ぐこととなり、自然を身近に感じるように考えた。具体的には、夏の葉の生い茂るきれいな風景は、劇を見るかの如く室内の光を抑え、南面する森の舞台を明るくし森のざわめく舞台を楽しむこととした。
葉の落ちた冬の舞台の休憩時間は南面する斜面に積もったきれいな純白の雪をレフ版として室内を光で満たした。
30年前からここに住み始めた住人(イヌエンジュの木)が以前と同じく街の人たちと会話ができるように
コートハウスとしながらも建物には隙間を設けこれからもこの地で豊かなコミュニティを育んでくれることを夢に見ている。
さらに30年後が楽しみだ。