家づくりを考えるとき、新築とリフォームの選択に迷うことは多いものです。特に、愛着のある家をリフォームして快適にしたいという方もいれば、古い家を解体して新築を建てたいと考える方もいらっしゃいます。しかし、どちらを選んでもそれぞれにメリット・デメリットがあります。
今回は、リフォームの可能性について、実際に行った改修事例を通じて、新築ではなくリフォームを選んだ場合にどのように快適な住まいにできるのかを紹介したいと思います。特に、リフォームで重視した「断熱性」「耐震性」の向上について触れながら、新築に負けない性能を持つ住まいの実現方法をご紹介します。
ケース紹介:リフォーム前の状況と課題

・様々な色と材質が混じって仕舞ていた外観。
・屋根から玄関付近へのの落雪。
・バルコニーからの漏水
・北西からの風で玄関付近に雪だまりが出来る

・軒下からの採光のため玄関が薄暗い
・玄関ドアの性能が低い為玄関が肌寒い
・屋根の痛み
・落雪による不安

・グラスウールの入れ方が不十分でかなり隙間が空いている。
・室内からの湿気がグラスウール部分に入り込み結露をおこしカビが発生
・構造用面材が無く耐震性に不安がある

リフォーム内容のポイント
a. 問題点の洗い出し
リフォームにおいて重要な事は問題点の洗い出し、そしてそれらの優先度を予算を考えながら決めていきます。見た目や使い勝手も大事ですが、断熱が不十分で、気密の考えもおろそかなまま蓋をしてしまうと構造体がさらに痛んだり、せっかく直したのにまた痛んでしまう等も考えられる。見えない部分こそしっかりどうするのか考えたうえでのリフォームを行うのが重要なのです。
b. 耐震性能の向上
リフォームにおいて、重要な部分の1つは耐震性の向上です。古い建物ほど耐震基準が現在の基準に見合っていない建物が多いので、地震対策は不可欠です。筋交いが不足していたり、筋交いが入っていても釘のみで固定されている事が多い事から付加断熱や防風シートを施す際に構造用面材で建物周囲を補強する事で、建物全体で耐震的に粘れるように耐震性を向上させました。このように、既存の建物を活かしつつ、現代の基準に近づける強化を施すことが可能です。
C. 断熱性能の向上
断熱性能を大幅に改善することで、冬の寒さを軽減し、年間を通して快適に過ごせる空間を実現しました。既存の床上に新たに断熱材を加え、床暖房を設置しました。これにより、ヒートショックのリスクも軽減され、全室が暖かい環境としました。
直接フローリングの下に施す床暖用のパネルは高価で、床暖用の高価なフローリングしか使えない為、微小空間ではありながらも床下空間を設け床下暖房としほんのり暖かで、足触りの良い床下暖房としています。
D. 空間の再構成
リビングや水回りの配置を見直し、無駄な壁を取り払って開放感を持たせました。キッチンとダイニング、リビングが一体となるように設計し、家族が自然に集まるような空間づくりをしました。また、寝室には朝日が差し込むように配置し、日常的に心地よい光が入るように工夫しました。

既存板金屋根を防水の一部と考え、その上に新たに落雪を防ぐ無落雪瓦を施す。

室内側だけの筋交いだったので、家の周囲を構造用合板で補強し、家の外壁全体で粘る構造とした。
バルコニーの床の様な勾配があまり取れない部分はシート防水など、その場所に見合った防水で設計を行う。

庭への視線を開閉可能な外付けロールスクリーンなどできれいに飾り、庭と室内を繋げる


既存の家具と合わせ設計したTV台
庭と繋がる大きな掃き出し窓
既存の床の上に床下暖房を施しナラの無垢材を貼った床

床材(ナラ)と家具(椅子のシートの黒)に合わせたキッチン
ウォーターサーバーの様なインテリアを邪魔するものは必要最小限だけ見える様に
キッチンからも大好きな庭が見える様に大きな窓を設置
重心を下げた玄関
北西からの雪を防ぐ為の壁
人を優しく迎える為に玄関周囲を板貼りとした

トリプル硝子の大きな窓
床下暖房を施した上に無垢材の床
