建築が地域の風景を変える|裏庭音楽祭とSky Court|北海道の建築家が考える建築と地域の関係
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毎年、札幌市西区の発寒川緑地で開催されている「裏庭音楽祭」。

緑の風景と一体になり、北海道の初夏のなかで音楽を楽しみながらゆったりとした時間を過ごすこのイベントは、今では札幌の初夏を彩る風景のひとつになっています。

大きな会場でもなく、有名な音楽フェスのような華やかさがあるわけでもありません。

それでも毎年多くの人が訪れ、この場所ならではの空気を楽しんでいます。

私自身も毎年楽しみにしているイベントのひとつです。

発寒川緑地の風景を活かしたこの音楽祭は、建築と場所の関係を改めて考えさせてくれます。

イベント会場の脇に建つ住宅は、出演者の控室としても使われています。この発寒川緑地に面して建つ住宅の計画にも以前関わらせていただきました。

https://atelier-02.com/case/living/5358

もちろん計画当時、この場所で音楽祭が開かれることは想像していませんでした。

しかし振り返ってみると、この住宅もまた建物そのものではなく、発寒川緑地との関係をどのようにつくるかを考えながら設計した建築でした。


建物の裏側に広がる豊かな風景

その住宅「Sky Court」の敷地は発寒川緑地に隣接しています。

一般的には敷地の中だけを対象として住宅を考えがちですが、この計画では敷地境界の先に広がる緑地も含めて暮らしの環境として捉えていました。

春には新緑が芽吹き、夏には木陰が生まれ、秋には紅葉し、冬には雪景色となる。

日々変化する風景が住宅のすぐ隣にあることは、この土地の大きな魅力でした。

建築は敷地の中だけで完結するものではありません。

周囲の環境との関係の中で、はじめて豊かな空間になることがあります。

緑道に面する住宅地でありながら、当時建ち並んでいた住宅の多くは敷地の中で完結する計画が中心でした。

もちろんそれが間違いということではありません。

ただ、この場所には発寒川緑地という大きな魅力がありました。

せっかくの風景を住宅の外側に置いてしまうのではなく、住宅と緑地がゆるやかにつながる関係をつくりたいと考えたのです。

そこでSky Courtでは、住宅と緑道の間に中庭を設け、街と緑道をつなぐ計画としました。

2階の中心部は大きくくり抜かれ、街側から中庭を見ると、その先にガラス越しの緑道が見える構成になっています。

建築によって風景を切り取るのではなく、街と緑道をつなぐための装置として住宅を考えました。


人が集まる場所には理由がある

裏庭音楽祭がなぜこの場所で始まったのか。

もちろん住まい手が音楽好きだったことも大きな理由のひとつです。

住宅には小さな音楽室を設けています。

そして、その音楽室は可動間仕切りを開放するとリビングと一体となり、さらに窓越しに緑道へと視線が抜ける構成になっています。

今振り返ると、その小さな音楽室がこの音楽祭の原点だったのかもしれません。

発寒川の流れがあり、大きな木々があり、空が開けている。

住宅地の中にありながら、少しだけ日常から離れた感覚を持てる場所です。

人は居心地の良い場所に自然と集まります。

それは住宅も同じです。

広いから良い、大きいから良いということではなく、なぜか居たくなる場所がある。

そんな空間には共通する魅力があるように感じます。


建築は完成してから育っていく

裏庭音楽祭では、現在使われているステージの設計にも関わらせていただきました。

予算は数万円ほど。

まずは人が立てるだけの簡素な舞台から始まりました。

しかし、ただ人が乗るだけのステージでは少し面白みに欠けます。

そこで背面には家型のフレームを設け、その内部を大きくくり抜きました。

額縁のように風景を切り取り、発寒川緑地そのものが舞台背景となるように考えたのです。

さらに、その家型に合わせてロープを木々へと張り、舞台と客席をゆるやかにつなぎました。

発想の原点には、地鎮祭で竹と注連縄によって場をつくる考え方があります。

建築物そのものではなく、場の輪郭をつくる設計です。

住宅の計画から始まり、地域のイベントへとつながり、さらに多くの人が集まる場所へ育っていく。

それは設計当初には想像していなかった広がりでした。

建築は完成した瞬間に終わるものではありません。

そこで暮らす人や集まる人によって少しずつ使われ方が変わり、新しい風景が生まれていきます。

設計者として建物をつくることはできますが、その後の時間までは設計することはできません。

だからこそ、暮らしや地域の中で建築が育っていく姿を見ることができるのは、とても嬉しいことです。


おわりに

裏庭音楽祭が始まったきっかけは音楽だったかもしれません。

しかし今では、地域の人たちが集まり、人と人がつながり、この場所ならではの時間を共有する場になっています。

建築が直接音楽祭を生んだわけではありません。

けれど、場所の持つ魅力を少しだけ引き出し、人が集まるきっかけをつくることはできるのかもしれません。

裏庭音楽祭の風景を見ていると、建築は建物をつくるだけではなく、その土地に新しい使われ方や記憶を生み出す可能性を持っていることを感じます。

文化や風景、そして地域の記憶。

そのようなものが建築をきっかけに各地で少しずつ育っていくことは、とても豊かなことではないでしょうか。

ATELIER O2では、北海道の住宅設計や別荘設計、店舗・商業建築の設計においても、建物単体ではなく周囲の風景や地域との関係を大切にしています。

建物の形を考える前に、その土地にどのような風景があり、どのような時間が流れているのかを読み取ることから設計は始まります。

裏庭音楽祭の風景を眺めながら、改めてそんなことを考えています。

↓今年も行います、裏庭音楽祭、だれでもどなたでも音楽を楽しむことができます。ショップも出店しますのでお楽しみに♪

https://www.instagram.com/uraniwa_music/
日常の喧騒を忘れて、緑あふれる発寒川新緑地で音楽に浸ろう!
日時: 2026年6月27日(土)11:00〜17:00(開場11:00)
場所: 発寒川新緑地(札幌市西区西野8条1丁目7-5 ハセベオフィス裏)
入場料: 500円 駐車場なし、公共交通機関でお越しください。
ジャズからロックまで、多彩なサウンドをお届け♪
出演者、出店については詳細決定次第順次告知いたします。
川のせせらぎと鳥のさえずりに囲まれて、非日常のひと時を。みんなで初夏の始まりを楽しみましょう。

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