設計事務所と工務店の違い|どちらが自分に合っているのか
家づくりを考え始めると、多くの方が一度は悩むことがあります。
「設計事務所に依頼するべきなのか、それとも工務店に相談するべきなのか。」
インターネットで調べると様々な情報がありますが、それぞれの立場から語られていることも多く、何が違うのか分かりにくいかもしれません。
実際には、どちらが優れているという話ではなく、家づくりに対して何を求めるかによって向いている選択肢が変わります。
今回は設計事務所と工務店の違いについて、建築家の視点からお話ししたいと思います。
工務店の家づくり
工務店は設計から施工までを一貫して行うことが一般的です。
家づくりの窓口が一つになるため、相談しやすく、全体の流れも分かりやすいという特徴があります。
また、長年の施工経験をもとにした提案を受けられることも魅力です。
予算を含めて早い段階から全体像を把握しやすいため、
「安心感を持って進めたい」
「できるだけシンプルに早く家づくりを進めたい」
という方には良い選択肢になると思います。
設計事務所・建築家の家づくり
一方で設計事務所・建築家は、設計を専業とする立場から家づくりに関わります。
建築を学ぶ過程では、単に間取りを考えるだけではなく、「なぜその建築がそこにあるのか」というコンセプトを重視します。
設計演習では、様々な条件や要求を整理しながら、一つの考え方を建築として成立させていく訓練を繰り返します。
私自身も長年、学生たちが建築を考える過程に関わる機会がありましたが、優れた計画ほど条件を満たすだけではなく、明確な考え方が空間全体を貫いているのです。
現在の住宅設計においても、その考え方は変わらないと思っています。
建物を建てる前に、
・どのような暮らしをしたいのか
・敷地にどのような特徴があるのか
・光や風をどのように取り込むのか
・周囲の風景とどのような関係をつくるのか
といった、家づくりの根幹となるコンセプトから考えていきます。
決まった商品や規格、今どきのデザインに当てはめるのではなく、その敷地、その家族のための建築を一から考えていくことが特徴です。
建物の大きさや形だけではなく、そこで過ごす時間や体験まで含めて計画していく仕事とも言えるかもしれません。
本当の違いは「何を中心に家づくりを進めるか」
設計事務所と工務店の違いを説明する際、性能や価格の話になることがあります。
しかし、性能については現在の住宅であれば一定の水準を満たすことはごく当たり前のことです。
また価格についても、どこまでを含めて何を比較するのかによって見え方は全く異なります。
もちろんそれらも大切な要素ですが、本質的な違いはそこではないと考えています。
大きな違いは、
「何を中心に家づくりを進めるか」
という点です。
工務店は施工経験や実績をもとに家づくりを進めます。
設計事務所は設計を専業とする立場から、敷地や暮らし方、風景との関係を読み取りながら計画を進めます。
どちらが正しいということではなく、家づくりに対する考え方や進め方が異なるのです。
ATELIER O2が大切にしていること
ATELIER O2では、まず敷地を見ることを大切にしています。
南側に窓を設ければ、必ずしも光が美しく感じられる家になるとは限りません。
大きな窓を設ければ豊かな空間になるとも限りません。日中、大きな窓からの視線が気になりカーテンを閉めたままでは、本来の豊かさとは少し違うかもしれません。
土地の高低差、周囲の建物、見える風景、光の入り方、季節の変化。
そうした条件を丁寧に読み取りながら、その場所に合った建築を考えています。
当然ながら、このような家づくりには時間が必要です。
敷地を読み取り、暮らし方を整理し、一つひとつの選択に理由を持たせながら設計を進めていくためです。
私の事務所にも「5〜6か月後には入居したい」というご相談をいただくことがよくあります。
しかし、設計期間や工事期間を考えると、そのスケジュールではお受けできないこともあります。
その一方で、全体の期間に余裕を持たせながら丁寧に家づくりを進めたいと考え直され、改めてご相談いただく方も少なくありません。
家は完成した瞬間がゴールではありません。
そこに住み始めてからが、本当の意味でのスタートです。
何十年も続く暮らしの大切な器だからこそ、図面を描く前に、その場所でどのような時間が流れるのかを長期的な視点で考え続けています。
おわりに
設計事務所と工務店のどちらが良いという答えはありません。
できるだけシンプルに進めたいのか。
自分たちらしい暮らしや土地の個性を大切にしたいのか。
何を優先するかによって選択肢は変わります。
大切なのは、自分たちの家づくりに合ったパートナーを見つけることです。
ATELIER O2では、北海道の風景や気候、敷地の個性を読み取りながら、一つひとつ異なる建築を考えています。
これから家づくりを検討される方が、自分たちに合った家づくりの進め方を考えるきっかけになれば幸いです。