北海道の別荘設計で大切にしていること|景色との距離を設計する
別荘の計画を考える際、多くの場合、最初に話題になるのは景色についてです。
海が見える場所が良い。山が見える場所が良い。森の中が良い。大きな窓を設けて景色を取り込みたい。
もちろん、それらは重要な要素です。しかし、景色が良い場所だからといって、大きな窓を設ければ豊かな空間になるとは限りません。
ATELIER O2では、景色そのものを設計するというよりも、「景色との距離」を考えることを大切にしたいと常々思っています。
景色が見えることと、景色を感じることは少し違う
大きな窓を設けると、多くの景色を見ることができます。
しかし、常にすべてが見えている状態が、その場所にとって心地良いとは限りません。
例えば、ソファに座った時だけ遠くの山が見える。キッチンに立った時に空が現れる。廊下を歩いた先に木々の間から光が入る。
そうした少し限定された景色の方が、記憶に残ることがあります。
景色を見るのではなく、景色が現れるような構成です。
映画のシーンでカメラが切り替わるように、すべてを一度に見せるのではなく、その時々で景色が現れるような感覚に近いのかもしれません。
場合によっては窓をすりガラスにしたり、障子を入れてあえて直接見えないようにすることもあります。
すべてを見せるのではなく、少し隠すことで、その先にある風景を想像する余白が生まれます。
想像を掻き立てる余白を残すことは、日本の水墨画にも見られるように、見えていない部分を感じるための手法のひとつだと思っています。
距離は窓の大きさだけでは決まらない
景色との距離は、窓の大きさだけで決まるものではありません。
建物の高さ、床のレベル、軒の出方、視線の方向、光の入り方によっても大きく変わります。
遠くの風景を意識するのか、足元の草木を感じるのか。
海を見るのか、空を見るのか。
同じ敷地でも、その選択によって空間の印象は大きく変わります。
場合によっては足元に窓を設けたり、床を地面より少し下げて目線を近づけることもあります。
逆に視線を樹木の枝の高さへ持ち上げ、鳥と近い目線で風景を感じることもあります。
単に大きな窓をつくるのではなく、視線の位置を少し変えることで、新しい気づきや時間の感じ方が生まれることがあります。
同じ景色でも、正面から見せるのか、少し視線をずらして見せるのかによって、風景の感じ方は大きく変わります。
時間によって変わる景色も設計する
北海道では季節による変化が大きくあります。
夏の緑、冬の雪景色、朝と夕方の光、天候の変化。
別荘は日常住宅以上に、その場所で過ごす時間の質が重要になると考えています。
そのため、固定された景色ではなく、時間とともに変化する風景も含めて考えています。
壁に映る木々の影が、風に揺れながら濃くなったり薄くなったりする。
空間そのものの豪華さではなく、その時にしか存在しない風景や時間の重なりに、別荘の本当の豊かさがあるのかもしれません。
一般的には、南側に庭を設け、北側に建物を配置することが緑を楽しむうえで良いと考えられることがあります。
ただ、緑は光を求めて南へ向かって葉を広げます。
北側から庭を見ると、葉の裏側や影になった部分を見ることになります。
逆に北側に窓を設けると、光を受けた葉が浮かび上がるように見えるこになります。
少し落ち着いた室内から、光を受けた緑を見る。
暗めの観客席から、光を受けた演者を見るような関係に近いのかもしれません。
おわりに
景色の良い場所に建築を置くことと、景色を感じられる空間をつくることは少し違います。
ATELIER O2では、景色を取り込むというよりも、建築と風景との関係を考えながら設計を進めています。
見える量を増やすことではなく、どのような距離で風景と向き合うか。その積み重ねが、空間の静けさや過ごす時間の質につながっていくと考えています。
別荘について書いていますが、ここで挙げた考え方は別荘だけに限るものではありません。
住宅や商業建築においても、日々の過ごし方や人と環境との関係を考える際に、常に意識していることです。
このようなことを考えながら設計していますので、もし作品を見る機会がありましたら、景色との距離や視線のつながりという視点でも見ていただけると嬉しく思います。
景色との距離や時間の質については、別荘だけではなく住宅設計でも考え続けているテーマです。
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