今回の計画では、クライアントと何度もコンセプトについて打ち合わせを重ねてきました。
少しずつ言葉を交わしながら、共通の方向が見えてきたように思います。
一方的に建築の考えを提示するのではなく、
この敷地に込めた思いを、住まい手自身の言葉として語ってもらうこと。
それが今回のプロジェクトでは重要だと感じていました。
「蟄虫(すごもりむし)」という名前も、
クライアントが最初にこの計画に込めた思いから、そのまま採用しています。
これまで何度も敷地に足を運び、
冬の時期にも現地を訪れながら、
この場所にどのような建築がふさわしいのかを探ってきました。

そして春になり、雪が解け、敷地全体を歩けるようになった今、
改めてクライアントに案内していただきながら、敷地を見ていきます。
すでにクライアントは何度も通っていることもあり、
その視点は少しずつ変わり、
土地の見方にも深さが出てきているように感じます。
敷地に立つと、図面だけでは分からないことが多くあります。
風の流れ、光の入り方、視線の抜け、そして距離感。
歩きながら確認していくことで、少しずつ整理されていきます。

今回の敷地は高低差があり、
立つ位置によって見える風景が大きく変わります。
どこに居場所をつくるかによって、
建築のあり方も自然と決まっていきます。

設計は図面の中だけで完結するものではなく、
こうした環境との関係を読み取ることから始まります。
ここからさらに、クライアントとの対話を重ねながら、
この場所にしかできないかたちを探っていきます。

こうした時間の積み重ねが、空間の質に現れていくと考えています。