敷地に正直であるということ
家づくりを考えるとき、多くの方がまず「どんな間取りにしようか」「どんな外観がいいかな」と思い描くのではないでしょうか。でも、その前にとても大切なことがあります。
それは、「その土地が、どのような個性を持っていてその個性を引き出すには何が必要か、何をしたら良いか」です。
ATELIER O2では、これまで北海道のさまざまな場所――森の縁や、街の傾斜地、防風林に囲まれた開けた敷地など――で住宅を設計してきました。共通して大切にしているのは、その土地に無理をさせず、ありのままを受け止めること。そこから住まいの輪郭を見つけていきます。
造成せず、地形に寄り添う設計
造成して平らにすることも、規格的なプランを当てはめることも、必ずしも悪いことではありません。
ただ、少しだけ立ち止まって、風の抜け方や光の入り方、隣家との距離や高低差といった、その土地がもともと持っている力に耳を澄ませてみると、既成のプランにはない、その場所だからこそできる住まいの姿が見えてくることがあります。

たとえば、ニセコ/NISEKOの傾斜地に建つ「双月・綽然」では、無理な敷地造成をせず地形に沿って計画を行い、
裏の森に向かう2階のリビングと子供室とを上下階に分ける構成としました。

また、「南幌町のきたすまいるヴィレッジ」では、風が通るように建物の配置や開口を整え、
土間や縁側のような空間を通じて、自然との距離をゆるやかにつなぐ暮らしを提案しています。
土地と暮らしに、まっすぐ向き合う
こうした設計は、一見すると特別なことのように思われるかもしれません。
でも実は、ごく自然なアプローチなのです。
「こうあるべき」という形に土地を合わせるのではなく、土地に寄り添って、静かにかたちを見つけていく。そうすることで、住まいは長く心地よく、暮らしにしっくりと馴染んでいきます。
建築家や設計事務所と聞くと、少し堅苦しい印象や、「自分たちには関係ない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
でも私たちが日々行っている設計作業は、決して特別なことではありません。
それは「その土地をよく観察し、そこに暮らす人の思いや生活に静かに耳を傾ける」という、ごくシンプルな営みです。このような考え方は、建築を学ぶ高校や大学でも当たり前のように教わる基本的な姿勢です。
ただ、実際の実務の現場で、それを愚直に実行し続けることは、そう簡単なことではありません。
設計と施工、営業が一体化した仕組みの中では、効率やルール、既製のプランが優先され、その土地の持つ個性や、住まう人の言葉が十分に設計に活かされる機会は、どうしても限られてしまいます。私たちのような専業の設計事務所は、敷地がもつ特性をじっくりと読み解き、それを設計に静かに落とし込んでいくことを大切にしています。 造成などは極力行わず、風の通り方や陽の入り方に沿って建物の配置を考える。隣家との関係や視線の抜けを意識しながら開口の位置を決める。
そうした一つひとつの行為が、その土地でしか成立しない住まいをかたちづくっていきます。 効率やスピードが求められる今の住宅づくりの流れの中で、こうした姿勢は少し遠回りに見えるかもしれません。
けれども、時間をかけて土地を読み、住まい手と対話を重ねることでしか生まれない住まいがある。私たちはそれを何度も経験してきました。
建築家は、決して遠い存在ではありません。
必要なのは、大きな予算や専門的な知識ではなく、「こんなふうに暮らしたい」「この土地が気になる」という素直な気持ちです。
その想いに寄り添いながら、土地と暮らしをつなげる“あたりまえ”の設計を、これからも積み重ねていきたいと思っています。
土地探しの途中でも、これから建てようか迷っている段階でも、どうぞ気軽にご相談ください。
土地が語ることを一緒に聴きながら、ゆっくりと住まいのかたちを探していけたらと思っています。